社労士が解説!最低賃金について ~63円引上げ、時間額1,097円に~

社労士が解説!最低賃金について ~63円引上げ、時間額1,097円に~
労働に関するお知らせ

社労士が解説!最低賃金について ~63円引上げ、時間額1,097円に~

投稿日: 2025-09-24

社労士が解説!最低賃金について
~63円引上げ、時間額1,097円に~

 

令和7年 11月 1 日に改定が行われる最低賃金について、特に重要なポイントを解説します。


令和7年 8 月 26 日、静岡地方最低賃金審議会が静岡労働局長に対し、
静岡県最低賃金を現行の時間額1,034円から63円引上げ、時間額1,097円、発効日は令和7年11月1日とする答申を行いました。
今後は、この答申の内容についての異議申出の公示などの諸手続を経て静岡県最低賃金を決定することとなります。
答申どおりの決定となると、対前年引上額は63円、引上率は6.09%となり、
引上額は過去最大、引上率は現在の時間額表示のみとなった平成 14 年度以降最大、6%台の引上げは昭和 56 年以来となります。

 

【参考:静岡県最低賃金額及び対前年引上率、引上額の推移】

  令和2年度        令和3年度        令和4年度            令和5年度        令和6年度        令和7年度        
最低賃金額         (885円) 913円 944円 984円 1,034円 1,097円
対前年引上率      -% 3.2% 3.4% 4.2% 5.1% 6.09%
対前年引上額 -円 28円 31円 40円 50円 63円

※注 令和2年度については改正なし
(参考:静岡労働局 報道記者発表 令和7年度「静岡県最低賃金」の改正を決定しました

 

1. 最低賃金制度について

 

最低賃金制とは、国が法的強制力をもって賃金の最低額を定め、
使用者は、その金額以上の賃金を労働者に支払わなければならないとする制度をいいます。
賃金は、本来、労使が自主的に対等の立場で話合いによって決定すべきものですが、
中小零細企業などに多く存在する賃金の低い労働者 は、その多くが未組織であるなど、
使用者との対等な交渉によって労働条件、とりわけ賃金を決定することがほとんど期待できない実情にあります。
このため、このような労働者の不公正な低賃金については、
国が積極的に介入して、賃金の最低限度を保障することとしているのです。
最低賃金制は、第一義的には賃金の最低額を保障することにより労働条件の改善を図ることが目的ですが、
第二義的には労働者の生活の安定、労働力の質的向上や企業間の公正競争を確保する効果なども期待され、
国民経済の健全な発展に寄与することをねらいとしています。
最低賃金法は、労働者を1人でも使用するすべての事業場に適用されます。
最低賃金が適用されるのは、原則として、すべての労働者であり、雇用の形態などは問いません。
現在、最低賃金法の規定にもとづいて決定されている最低賃金には、主に地域別最低賃金と特定(産業別)最低賃金とがありますが、
このうち地域別最低賃金は、当該都道府県内のすべての労働者とその使用者に適用されますので、
あなたの事業場についても、事業場が所在する都道府県の地 域別最低賃金が適用されます。
特定(産業別)最低賃金は、特定の産業に属する事業場の基幹的労働者とその使用者に限定して適用され、
また都道府県により適用対象業種の範囲なども異なりますので、
適用関係の詳細については最寄りの労働基準監督署でお確かめください。

 

2. 罰則規定について

 

① 労働者に対し、地域別最低賃金において定める最低賃金額を支払わなかった使用者は、
最低賃金法4条1項に違反し、「50万円以下の罰金」に処せられます。
② 特定最低賃金については、最低賃金法の罰則の適用はありません。
ただし、特定最低賃金が適用される場合で、特定最低賃金の額に満たない額を約定賃金としている場合は、
特定最低賃金の額が支払われるべき賃金額となりますので(最賃4条2項)、
支払われた賃金の額が特定最低賃金の額を下回り、地域別最低賃金の額を上回る場合は、
労働基準法24条違反として、「罰則(30万円以下の罰金)」が適用されることになります。
(この場合で、支払われた賃金の額が地域別最低賃金の額に満たない場合は、原則どおり、最低賃金法4条1項違反として、「50万円以下の罰金」に処せられます。)

 

3. 最低賃金の計算方法 について

 

実際の賃金が最低賃金額以上となっているかどうかを調べるには、賃金総額から最低賃金の対象とならない次の賃金


① 臨時に支払われる賃金(結婚手当など)
②1か月をこえる期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
③所定労働時間外労働手当、所定休日労働手当、深夜労働の割増賃金
④精皆勤手当、通勤手当および家族手当を差し引いた後の賃金額と、適用される最低賃金額とを比較します。
日給制や月給制の場合は、1時間当たりの賃金に換算して比較をします。

 

4. 事業者への助成、支援制度について

 

地域別最低賃金は毎年変更されており、年々上昇しています。
企業は労働者に支払う賃金がこの最低賃金額を下回ることはできません。
国は、中小企業・小規模事業者の生産性の向上を支援することで事業場内の最低賃金(事業場内で最も低い賃金)の引上げを図るための助成(業務改善助成金)を行っています。
当該制度は事業場内最低賃金を一定額以上引き上げ、設備投資(機械設備、コンサルティング導入や人材育成・教育訓練)などを行った場合に、その費用の一部が助成されるというものです。
詳しくは「業務改善助成金コール センター」にお問い合わせください。(業務改善助成金コールセンター:0120-366-440)

 

また、「働き方改革推進支援事業」を行っており、静岡県では静岡県社会保険労務士会が
「静岡働き方巣新支援センター」として受託をしています。
静岡働き方推進支援センターでは、無料で事業所にご訪問してのご支援、
フリーコールでの電話相談でのご支援を行っておりますので是非ご利用になってください。
(参考:静岡働き方改革推進支援センター | 働き方改革特設サイト | 厚生労働省