社会保険労務士制度の沿革(概要)

社会保険労務士制度の沿革(概要)

1. 社会保険労務士とは

社会保険労務士制度は、昭和43年6月3日に制定公布され、同年12月2日に施行された社会保険労務士法に基づく国家資格者である。
社会保険労務士制度は、労働及び社会保険に関する法令の円滑な実施に寄与するとともに、事業の健全な発達と労働者等の福祉の向上に資することを目的とするものであり、社会保険労務士は、労働基準法、雇用保険法、健康保険法、国民年金法など、国民の生活と企業の事業運営に密接に関わる労働社会保険諸法令に精通した身近な専門家として活躍している。

2. 社会保険労務士制度の誕生

■ 戦後の産業・経済の著しい発展による社会的ニーズの向上
戦後の復興期に合わせて日本の雇用・労働体制が確立されるとともに、社会保障制度の整備が急ピッチで進められた。これに伴い、多様化した中小企業の労務管理への対応及び社会保険に関する事務処理に専門的な知識・経験が必要とされるようになり、これらの事務を専門的に行う職業として誕生した。
■ 団体設立に向けた機運の高まり
一方で、これらの代行業務を請け負うにあたって著しく高額な報酬を求めたり、あるいは労働争議に不当に介入する者が現れ、「業界団体を結成し、自主的な規律の確立と資質の向上を図るべき」という機運が高まるようになった。こうした流れを受け、「労務管理士」、「社会保険士」が誕生した。
■ 社会保険労務士法の制定
その後、「労務管理士」と「社会保険士」は広く認知され、社会における重要度も増していくことになった。そのような動きを受け、両制度を併せて法制化する動きが活発となり、昭和43年6月3日に「社会保険労務士法」が公布され、同年12月2日に施行された。
■ 「都道府県社会保険労務士会」・「全国社会保険労務士会連合会」の設置
法制定当時は、(社)日本労務管理士協会、(社)日本社会保険士会を中心に、複数の団体が併存していたが、昭和53年5月、第1次社労士法改正が行われ、法定団体として、都道府県ごとの「社会保険労務士会」が設置されるとともに、連合組織として「全国社会保険労務士会連合会」が設置された。

3. 社会保険労務士法改正の経緯

社会保険労務士法は、昭和53年の第1次法改正、昭和56年の第2次法改正、昭和61年の第3次法改正、平成5年の第4次法改正、平成10年の第5次法改正、平成14年の第6次法改正、平成17年の第7次法改正及び平成26年の第8次法改正を経て、今日に至っている。

4. これまでの社会保険労務士法改正の概要

第1次法改正
昭和53年5月20日公布 昭和53年9月1日施行
提出代行業務の追加 / 社労士会の設立等 / 連合会の設立等 / 社労士会及び連合会の行政機関への協力

第2次法改正
昭和56年6月2日公布 昭和57年4月1日施行
社労士の職責の明確化 / 団体登録制への移行 / 提出代行事務の範囲の拡大 / 懲戒、罰則規定等の整備 / 申請等に関する付記の制度の新設・社労士会及び連合会の事務の範囲の拡大等 / 社労士となる資格の要件の整備

第3次法改正
昭和61年5月23日公布 昭和61年10月1日施行
事務代理の新設 / 勤務社労士に関する規定の整備 / 研修受講等の努力義務化

第4次法改正
平成5年6月14日公布 平成6年4月1日施行
職務内容の明確化 / 登録即入会制への移行

第5次法改正
平成10年5月6日公布 平成10年10月1日施行
社会保険労務士試験の試験事務の連合会への委託等 / 事務代理等の範囲の拡大等

第6次法改正
平成14年11月27日公布 平成15年4月1日施行
あっせん代理業務の追加等 / 社労士の権利及び義務に関する規定の整備 / 社労士試験の受験資格の緩和 / 社労士法人制度の創設 / 登録事項の整備等 / 社労士会及び連合会の会則の記載事項の整備 / 法人制度設立に伴う罰則の整備・懲戒事由の通知に関する規定の追加等

第7次法改正
平成17年6月17日公布 平成18年3月1日及び平成19年4月1日施行
紛争解決手続代理業務の拡大 / 紛争解決手続代理業務に係る研修及び試験 / 労働争議不介入規定(法第23条)の削除 / 社労士法人に関する規定の整備

第8次法改正
平成26年11月21日公布 平成27年4月1日及び平成28年1月1日施行
個別労働関係紛争に関する民間紛争解決手続における紛争の目的の価格上限額の引き上げ / 補佐人制度の創設 / 社員が1人の社労士法人の設立に関する規定の整備