 
            
  「年収の壁」とは、給与収入が一定額を超えると、税金や社会保険料の負担が発生し、
手取りが逆に減ってしまうように感じられる境界線を指します。
これまで、「103万円・106万円・130万円」などが典型的な壁とされてきましたが、
令和7年度税制改正によって大幅な見直しが行われました。
まず、所得税に関する改正では、基礎控除額の引き上げと給与所得控除の底上げにより、
所得税が発生しない水準が「103万円」から最大「160万円」に引き上げられました。
 扶養控除の対象となる年収上限も従来の「103万円」から「123万円」に引き上げられました。
 また、大学生世代(19~22歳)の子に関しては、「特定親族特別控除」が新設されました。
子の年収が123万円(従来は103万円)を超えると扶養控除の対象とはなりませんが、
子の年収が123万円超188万円以下の場合には親の所得から段階的に控除できる仕組みが導入されました。
 ただし、税制改正で「年収の壁」が緩和されたとはいえ、社会保険の壁(106万円・130万円など)があります。
 たとえば、年収106万円を超えると一定要件のもと厚生年金・健康保険への加入義務が生じる可能性があり、
年収130万円を超えると社会保険の扶養から外れて国民年金・健康保険への加入が必要になるケースも残ります。
 加えて、令和7年10月1日からは19歳から23歳未満の被扶養者について、
年収が150万円未満(従来は130万円未満)であることが扶養認定の要件とされました。
大学生世代の子がアルバイト等で収入を得ている場合には、150万円を超えると社会保険の扶養から外れる点にも注意が必要です。
 このように、令和7年改正によって「所得税の壁」は大きく動いたものの、
社会保険制度との関係を含めて年収調整を考える際の判断はなお複雑です。
社会保険制度に関しては我々社会保険労務士にお気軽にご相談ください。
